二〇一二年一二月二六日、
自民党の安倍晋三総裁が首相に指名され、
第二次安倍政権が発足した。衆院選で二九四議席、
公明党をあわせた与党で全議席の三分の二を超えるという圧倒的な
力を得て、「日本を取り戻す」と連呼する国家主義者による、
極右保守政権が登場した。
安倍自民党が選挙戦で掲げた政権公約には、「被災地の復興」「
日米同盟の強化」「集団的自衛権の行使を可能に」「
領海警備の強化」「成長するアジア経済圏を取り込み……
国際資源戦略を展開」「教科書検定基準を抜本的に改善し、
あわせて近隣諸国条項も見直し」などの文言が並ぶ。それらは、
原発の再稼働と新規建設を見据えつつ、住民不在・資本主導の「
復興」をすすめること、安保体制に基づく日米同盟を基軸とし、
沖縄をふみにじって軍事力を強化すること、
アメリカと共同してアジアにおける覇を唱え、
国家主義的な国内再編成を進めるということの宣言である。
そして最後には、安倍の「悲願」ともいえる「
新しい日本のかたち」をつくること、すなわち憲法の「改正」
が提示されているのだ。
サンフランシスコ講和六〇
年を機に昨年改訂された自民党の憲法草案は、
九条改憲はもとより、天皇元首化や「日の丸・君が代」の国旗・
国歌としての明記、「公共の利益と秩序」
のために基本的人権や表現の自由の制限を公然と掲げるものであり
、なによりも、
主権者である民衆が国家権力を縛るためのものである憲法を、
国家が民衆を縛るという観点で書き換えている点において、
けっして許すことのできない代物だ。たしかに、
自民党が積極的に支持された結果としての選挙戦の勝利とはいえず
、
また与えられた支持も改憲政策に対するものではなかっただろう。
とはいえ、
政権公約にそれを書き込んだ自民党が圧倒的多数の議席を得たこと
の意味は大きい。さらにまた、
自民党を右から突き上げる日本維新の会が、
凋落した民主党に迫る議席を得た。政権交代期はもちろん、
第一次安倍政権の時期と比べてさえ、政治的な力関係、
そしてそれを支える社会的な意識が、
大きく右に動いているといわざるをえない。
こうした状況を少しでも変えていかなければならない。
もちろん、いったんは挫折した安倍の政治が、
こうした背景を力に一気に現実化するとは必ずしもいえないだろう
。安倍政権は、当面は中国や韓国との関係修復に動き、
村山談話の踏襲も口にしている。さらに「従軍慰安婦」
問題での日本軍の関与を認めた河野談話に関しても、
当初その見直しを明言していたのに、一転して「慎重に」
と立場を修正した。その背景には、
主として米日韓の東アジアでの連携を優先するアメリカ国務省から
の要請もあったと伝えられる。
けれども、そうであればなおさら、
国内的には国家主義的な右翼政治は一層強まっていくはずだ。
対外的なアメリカ追随と国内的な「復古色」、
それが安倍のナショナリズムである。さらにいえば、
自民党の政権公約に掲げられていた項目も、
実際にはすでに実体化しつつある現実そのものだ。
米軍基地の強化と日米軍事一体化、領土ナショナリズムの扇動、
原発の再稼働、民衆の生存権にかかわる政策の改悪、
さらには天皇の実質的な元首化や、「日の丸・君が代」
のおしつけ、社会全体に蔓延する排外主義的なムード、
国家による治安弾圧や人権侵害、これらはもはや日常である。
安倍政権の役割は、そういった方向性を強化し、
より目的意識化し、現実のものとして進めていくことである。
こうしたなかにあって、われわれは、「安倍改憲政権」
を許さないという角度から、
今年の反天皇制運動を展開していきたいと考える。
天皇起源の建国神話は、「日本の伝統文化」
の一環としてあらためて位置づけなおされるであろうし、
おそらく今年も、天皇出席のもとで3・11の「
東日本大震災追悼式」が開催されるだろう。
憲法記念日を前後して改憲論議がすすみ、
参院選の結果によっては、その具体化が着手されるだろう。
こうしたなかで、国家主義や歴史の偽造がすすみ、「公共の秩序」
をうたって治安弾圧も強化されるだろう。私たちは、
こういった状況をはねかえしていくためにも、
さまざまな運動課題を担ってきた人びととともに、
協働の取り組みとしてこれらの状況に対する抗議の声をあげていき
たいと考える。2・11の反「紀元節」
行動をともにつくっていくために、多くの参加賛同を訴えます。
安倍改憲政権を許すな! 2・11反「紀元節」行動